チュウヤギャクテン。

主にSHISHAMOのライブレポートや遠征記を綴っています。

SHISHAMOワンマンツアー2018春「ドキドキしながら手を握ったのは、君には見えないあの娘が大人になるのが怖かったから」総括レポート

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 SHISHAMOは初めてワンマンツアーを周った2014年から毎年、春・秋の年2本ワンマンツアーを開催しています。よって今回のワンマンツアー2018春はバンド史上9回目のワンマンツアー。2017春はアリーナ編・ホール編・ライブハウス編と様々なシチュエーションで行われ、2017秋はゼップ4都市プラス福岡ドラムロゴス・仙台PITのライブハウスツアーでしたが、今回は3ヶ月に及ぶ全19箇所20公演のホールツアー。全国のホールを周るツアーは2016春以来、丸2年ぶりとなりました。
 今回のツアーは事前に予告されていた通りアニメーションを駆使したものとなっていて、完全二部制でコンセプトの詰まったライブという点でも2016春ツアーを彷彿とさせました。1部の世界から舞い戻ってきた3人が「あの時計見て、もうあんな時間〜」(決してその時計は映さない)とその日の会場を目指す、という設定の公演ごとに異なる映像が流れ、2014秋ツアーの入場SEであった「Emerald Music」に乗せられて会場1階後方からプロセス入場、2部のライブがスタート、といった全体の流れも全く同じでした。「前のホールツアーが凄く楽しかったから」ツアー開始前のインタビューで朝子はそう言っていましたが、確かにあのツアーは2年経った今でも個人的にかなり思い入れのあるツアーです。大掛かりな舞台セットを使用し、描き下ろしのアニメーション・ストーリーとリンクしてライブが進行していくところ、完全二部制でアンコールが無いところ、全てが新鮮で、それまでのツアーとは全く違ったものでした。1部・2部通してひとつの物語になっていて、宇宙服をイメージして作られた3人御揃いの衣装も可愛らしく、初日の川口からファイナルの福岡まで11本全公演に足を運びましたが2本目以降は「今日初めて目撃する人が羨ましい」「もう一度“初めて”観たい」と毎公演思っていました。このブログで総括レポートを綴り随分と褒め讃えてしまいましたが、今よりも盲目的に見ていたというのは多少はあっても、あれは全てその時感じた率直な気持ちで、本当に凄いと思ったし全てセルフプロデュースであそこまでやるこのバンドは凄いと改めて思わされたツアーでした。
 今回のツアーの第1部の舞台は「廃校」。ツアーのテーマは「わくわくホラー」「オバケ」といったキーワードが挙げられ、ナタリーの記事では“廃校に迷い込んだSHISHAMO、観客が待ちわびるライブ会場目指す”といった内容が発表されていました。一見イメージしづらいかもしれませんが、2016春とやってることは大体同じ。ストーリーに突っ込みどころ満載なのは置いといて(①開演1時間前にどこ歩いてんの!?②「この廊下長くない…?」ってことだったのにどうやって体育館へ…?③ギター・ベースはいいとして、ドラムセットとアンプはどこから…?)、以下、率直な感想。(先に言っておくけどこの先全体的にあまり良いこと書いてないので、等々力ワンマン開催に向けてわくわくモードの中勘弁してくれよ!という方はここでリターン…)


  まず。冒頭からマイナスな意見をぶつけてしまいますが…2016春のツアーが宇宙⇔地球という2つの舞台が明確に相反するものだったのに対し、今回は廃校⇔外の世界という、住み分けがいまひとつハッキリしないものでした。そして、あの物凄いツアーを観た後だったこともあり、どうしても二番煎じ感が出てしまっていたかなーというのが正直な感想です。ストーリーをゼロから考え寝ずにイラスト描き続けた朝子のことを思うとこんなこと言うの心苦しいのですが…初日の大阪公演を観た限りでは、自分はそう感じました。
 良くないことばかり書き連ねるのも可哀想なのでひとつ良かったことを言っておくと、1部では水色の日々から始まり中庭の少女たちなど学校がテーマの楽曲を中心にセットリストが組まれていましたが、ここの1部の曲のまとまりは大変良かったと思います。というか、学校の曲やりたい!→舞台を学校にしよう→廃校?…という感じで決まっていったのかなーと思うのだけどどうなんだろう。
 ワンマンでは定着しつつあるアコースティック。過去のツアーで披露していた「音楽室は秘密基地」「行きたくない」に加えて、今回は「さよならの季節」が初めてこの編成で演奏されました。ギターのフレーズを奏でるイントロ冒頭のグロッケン、朝子のボーカルとギターだけが響くAメロ、吉川のコーラスが入ってくる最後のサビ。松岡のグロッケンが全体的に主旋律を担当していましたが、このアレンジは個人的にかなり好きでした。
 え、やってなくない!?って思う人居ると思うけど、このさよならの季節、10本目の高松から突然セットリストから外れてしまったんですよね。アコースティック3曲は多いと思ったんでしょうか。確かに、自分もそれは感じていて、音楽室は秘密基地と行きたくないはツアーのコンセプト的にやった方がいいと思うので削るならさよならの季節なのだけど、せっかく新しいアレンジで練習したのに勿体無いなーと思ってしまったのと、先述の通り個人的にこのアレンジ気に入っていて毎回楽しみにしてたこともありこの変更は残念な点でした。
 セトリに関しては色々と指摘したいのだけど、先に演出面について触れておきます。「あの娘泣かせたままじゃ帰れないでしょ!」ということで、廃校体育館ライブという設定で「魔法のように」「ドキドキ」「恋する」の3曲を演奏し、第1部“廃校編”は幕を閉じます。「魔法のように」では大サビを過ぎた辺りでスクリーンにあの娘が現れ、「ドキドキ」では初日の時点で公式から盛大なネタバレのあった通り、ステージ後方にオバケ3体登場。1部ラストソングの「恋する」で客席にオバケの顔が描かれた白い風船投下。風船返し要員のスタッフが配置される前にステージ上に到達してしまいローディーの方が出てきて弾き返したり…とグダグダになっていた日もありましたが、オバケ達がライブを楽しんでいる風にしたいという演出はわかるので、あれはあれで良かったかなーと思います。「魔法のように」の大サビ“キラキラキラキラ笑顔を見せて 鏡の中の私は~”の部分、あそこはお客さんに歌わせていましたが、私の記憶が正しければ春フェス明けの高知からスクリーンに歌詞が表示されるようになりました。“そう思えますように☺”であの娘がポンと現れますが、その流れもより自然になって良かったです。「ドキドキ」のクラップ&“ヘイ!”はツアー序盤では実際にやってる人少なすぎて、メンバーが言っていた通り「挙げてる人居なさすぎて2回目から登場せず!」みたいになってしまっていましたが、K氏の観察日記での呼びかけもあり、ツアー後半ではだいぶ浸透してきました。とは言っても1階前方エリアでも全体の3割ぐらいだったので、あれこそスクリーンで何か強調出来ると良かったかなー。(と言っても3体のオバケで見えなくなってるのかー)
 無事に廃校から脱出し1部が終了。アニメーションから実写へ変わり、“御当地映像”と言われるものの上映が始まります。2016春の時はとあるスポットから会場まで歩く途中で少し寄り道して買い食いしたり…ぐらいでしたが、今回はライブとどっちがメインなんだというぐらいガッツリロケでしたね。今回のツアーは基本毎週土日2daysの日程でしたが、土曜日の分は前乗り日に撮影出来るけど日曜日の場所は当日に撮るしかないわけで。メンバーも今回のツアーでこれが一番過酷だったとツアー振り返りのLINE LIVEで話していましたが、ほんと大変だったと思います。北海道の釧路・札幌2daysとか、撮影のためだけに前々乗りして釧路へ行く前に木曜日に札幌に立ち寄っていたりとか。釧路と高知の松岡の運転による3人ドライブはなかなかレアな映像だったのでは。朝子は「信用する人の車しか乗らない」「コイツが運転するとかおっそろしくて仕方ない」…などと言っていた割には、結構ノリノリで助手席乗ってましたね。(笑)
 2部のセットリストの中でピックアップするとしたら、やっぱり新曲の「同窓会」ですかね。ニューアルバム『SHISHAMO5』に収録されていますが、久し振りに個人的にドストライク。間奏のベースからギターが入っていくところは最高にカッコ良いし、4つ打ちのリズムも良い。この曲好きな人多いのでは。何故かセトリから外された公演もあったけど…。
 全20公演分のセットリストを下記にまとめました。公演ごとにセトリを変えるのは良いと思うけど、同窓会を外した理由がわからない。未発表の新曲はコアなファン以外にはウケが悪いとでも思ったのだろうか?

  本編最終ブロックに入る前のMC(図中のMC③)では、今年は夏フェスに1本も出ない!と宣言し、初のスタジアムライブである等々力陸上競技場でのワンマンに専念することを語りました。これが等々力の集客アップへ繋がるかといえば正直微妙な気もするけど(年内のワンマンはこれが最後です!だったら結構効果あると思うけど、元々フェスには興味無いという人は多いので…)、本格的にバンド活動始めてから毎年夏は各地のフェスへ出まくっていたので、たまには全く出ない年があってもいいんじゃないかな。自分も、例年7月下旬~9月上旬は毎週末フェスへ出向いていたので、今年は久し振りにのんびり出来そうです…。(何なら、半年ぐらい休んでくれてもいいんだけど…)
 2016春のホールツアーでは完全二部制でアンコール無しでしたが、今回は二部終演後再び登場し1曲だけ披露。その1曲というのが新曲で、『SHISHAMO 5』の一番最後に収録されている楽曲「私の夜明け」になるのですが、曲に入る前、朝子から「今日は楽しくライブ観てくれたと思うんですけどきっと毎日楽しいわけではなくて、嫌なことされたりとかちょっとしたことで落ち込んだりとか。この中には“自分には味方が居ない、自分は独りぼっちだ”と思っている人が居るかもしれないけれど、そんな人達の味方になれるような曲を作りました。」「SHISHAMOはずっとみんなの傍に居ることは出来ないけれど、傍に居れるような曲を作ることが私達の役目だと思うので。」といった内容のことが語られました。どの公演でも同じような内容を話していましたが、これを最初に聞いた時、私は「変わってしまったなー」…と思いました。今まで、メンバーチェンジもあったし『4』辺りから楽曲がポップス寄りになってきたりしたものの、それほど「変わったなー」と思うことはありませんでしたが、今回のツアー、そして朝子のあの言葉、確実に変化を感じました。そして、それが凄く寂しかったりしました。
 「メッセージ性がないのがSHISHAMO」「応援ソングは嫌い」と言っていた頃でも「みんなのうた」なんかはそっち路線の曲でしたが、「これはメッセージソングです」と全面に出されたものでは決してありませんでした。それが今回、「味方になれるような曲を作った」「傍に居れるような曲を作ることが私達の役目」…一体どうしちゃったんだ?あれほど頑なに「応援ソングは嫌い」と言っていたよね?「明日も」が思いのほか売れてしまったから?…と戸惑わずにはいられず。「バンドが変わることが嫌なんです」これは過去に朝子が雑誌のインタビューで言っていたことです。変わることが決していけないことだとは思わないし、現に、3ピースの音以外を入れなかった頃から一転し、今ではピアノやストリングス、シンセサイザー等様々な音を取り入れていますが、それは「今まではライブで演奏することを意識して曲を作っていたけど、ライブには来られないけど曲を聴いてる人も多くて、だからライブでどうするかという部分を取っ払った」「5人で鍵盤もあるキュウソの曲を3人で演奏したりして、他の音を3人で表現する楽しさも覚えた」というのを聞いて「なるほどね、そうだよね」と思ったし、朝子は常に“曲を良くすること”を最重視していますが、他の音が入ったことで格段に良くなった曲は沢山あります。リリース当初は「ライブで歌うのも凄く嫌」とまで言っていた「明日も」を好きになれたのは「この曲が無かったら出会えていなかった人も居るかもしれない、みんなとSHISHAMOを出会わせてくれた曲」今回のツアーでそう語った朝子。そこまではわかるけど、そこから何故「応援ソングは嫌い」と言っていた頃から180°方向転換して「私の夜明け」が生まれたのか、自分の中で直結せず、ツアー中ずっとモヤモヤが続いていました。
 それが変わったのはツアー終盤、残すは4本となった頃。「音楽と人」7月号のインタビューを読んだ時。某M誌みたく“追い込み漁”のようなインタビューにはなりすぎず、私が疑問に感じていたことをピンポイントで聞いてくれました。ツアー初日から感じていたモヤモヤの大方が解消され、最後の一言を読んで、やっぱりそうなのね(笑)と少し安心しました。ツアーセミファイナル前日に発売されたその…某M誌の方は、「ちょっとオッサン黙ってて!」と雑誌に向かってツッコみたくなったりはしたものの、カップリングを全てアルバムに入れる理由等、かなり読み応えあったのでこの2誌はまだ未読の方が居たら絶対に読んだ方がいいです。特に音楽と人。次号が発売されているので在庫無くなってきてますが、タワレコオンラインなら取り寄せ出来ます。
音楽と人 2018年7月号 - TOWER RECORDS ONLINE

 今回のツアーでの朝子のあの言葉、リアルな歌詞つまりは自分のことを歌った「私の夜明け」を聴いて。朝子も色々と思うことあるのねー、と思いました。吉川は「ちょっとしたことで落ち込んだり…」とかよく言うし、前回のツアーのMCでは毎公演そんな感じのネガティブトークを繰り広げていたので「また始まった…」とか思っていたけど、朝子ってあんまりそういう話聞かない気がするんだよね。ネット上では未だにブスだのなんだの言われ続けてるし自分も太っただのなんだのと書いてしまったことあったので、そういうの気にしたりしてるのかなー…とか。ツアー後半の京都では、私の夜明けの前振りに入る前に、プチ失踪して京都に1週間ほど滞在したこと、その時に凄く救われ色んな想い出が出来たこと、それもあったからずっと京都に来たかったことを語りました。その失踪事件のことは知っていたしその時の出来事が「旅がえり」の歌詞に表れているのですが、「疲れちゃったなー」と思ったから、とか、朝子もそんなふうに思うことあるのねー、と少し心配になったり。生きていれば色々あるのは当たり前だしミュージシャンのような表に出る人なら尚更だとは思いますが、自分は日常で「落ち込むなー」とか思うことそれほど無いし、「私の夜明け」も良い曲だとは思うけど自分にはそんなに響かないので、多分日々頑張って生きてないんだと思います。(笑)
 3年ぐらい前に「SHISHAMOのどこが好きなの?」「なんでこんなに来てくれるの?」と4人に囲まれて聞かれたことがあり、その時はとっさに「曲が好き」とか言ったのですが(「いや、それだけで来ないでしょw」とK氏に早々にツッコまれる)、曲が好きなのは勿論だけど毎日毎日SHISHAMOの曲ばっかり聴いてるわけでもなく。何でかと言うと、…もうどうしようもなく、朝子に惚れてしまってるんですよね。どこが好きか、と言われると上手く説明出来ないし本人に「好きです」とか言ったこと一度も無いんだけど、女性ボーカルの曲を好まなかった自分でも朝子の歌声はすっと入ってきて、“他の人とは違う何か”を感じ、どこか惹かれるものがありました。「女ごころ」の歌詞の意味を知った時、大阪城ホールのど真ん中で「夏の恋人」の弾き語りを聴いた時、さいたまスーパーアリーナのSTAR STAGEの大舞台で「カブトムシ」のカバーを聴いた時、オハラ☆ブレイクで「ひこうき雲」のカバーを聴いた時、どれも「この人信じてきて良かった、初めて出会った時自分が感じたあの感覚は間違っていなかった」と思わせてくれた瞬間でした。
 今回のツアーを通して、SHISHAMOに出会った時のこと、歴代のワンマンのこと等を思い出して自分なりに色々と考えましたが、やっぱり自分は朝子が好きなので、あの人が「まだまだいい曲も作れるしいいアルバムも作れる」と言っている限りは、その言葉を信じてついていこうと思います。ツアー初日に朝子のあの言葉を聞いた時は「変わってしまった」と思ったけれど、それは今回のアルバムのプロモーションでの各インタビューを読んで納得したし、それでも根本的なところは何も変わっていなくて、これだけ有名になっても私達ファンへの接し方も昔と変わることなく素晴らしいファンサービス、こんなバンド他に見たことない。数年前は「バンドと結婚を天秤にかけてバンドが勝ったことがない」とかあんまり長くバンドやりたくないというようなニュアンスの発言をしていて、自分はいつ居なくなってもいいように後悔しないよう行けるライブには出来る限り足を運んでいましたが、今のところまだまだやる気な感じがするしバンドとしてもCDデビューからずっと右肩上がりの勢いが続いているので、そうですね、あと5年ぐらいは音楽やっててほしいなー。10年後何してたい?みたいな質問された時誰もSHISHAMOやってたいって言ってなかったけど。(笑)
 だいぶ脱線してしまいましたが…、話を元に戻して。朝子は「今回のツアーは“日常”だった」と言っていましたが、自分もそれは同じで。月〜金働いて土日にツアーが待ってる、3ヶ月間ずっとそんな生活でした。ツアーファイナルの広島公演の後は、そんな生活リズムが終わってしまって寂しさもありましたが、少しホッとしたり。(笑) メンバー・スタッフ一同、そして自分も含めて、19箇所20公演本当にお疲れ様でした。色々と指摘はしてしまいましたが…、それも愛故に、ってことで許してね。ガールズバンドを一切聴いてこなかった自分をこんなに夢中にさせてくれたSHISHAMO。あの子達から発信されるもの全てを追いかけることが、今の私の生きがいです。今後の更なる活躍、期待してます。今は等々力モード一色だと思いますが、先行分の発券も始まりいよいよ2週間切りましたね。スタジアムということで天気が心配ですが…初の野外ワンマンの3年前の日比谷野音で降水確率90%の天気予報を覆したり数々の実績をもつ究極の晴れ男のマネージャーが付いているので大丈夫でしょう!等々力ワンマンのBlu-ray(出るよね?)の特典でいいので、今回のツアーのアニメーション映像と御当地映像フル収録してね!